人工骨頭置換術と人工股関節全置換術(THA)は両方とも人工関節で似ていますが、違いを知っていますか。
似たような手術に見えても全く違うものになります。
それではご説明しましょう。
人工骨頭置換術と人工股関節全置換術は、一見似たようなものに見えるかもしれませんが、適応疾患や目的が全く違います。
ここをしっかりと抑えておかないと、リハビリプログラムや評価、ゴール設定がぐちゃぐちゃになってしまうため注意が必要です。
それではご説明しましょう。
人工骨頭置換術と人工股関節全置換術(THA)の違いとは?
この2つは適応疾患や目的、ゴールで求めるレベルが異なります。
それでは人工骨頭置換術からみていきましょう
人工骨頭置換術とは?
適応疾患とは?
人工骨頭置換術の適応疾患は、大腿骨頚部骨折です。
大腿骨頚部骨折は高齢者に多い骨折の一つで、大腿骨頚部の骨折です。
そのため、手術で置換するのは大腿骨頚部と大腿骨頭であり、臼蓋は置換しません。
目的とは?
大腿骨頚部骨折に対する人工骨頭置換術の目的は色々ありますが、重要なこととして早期に離床ができることです。
ベッドの上で安静にしている期間が長ければ長いほど、廃用性の筋力低下や関節可動域低下、循環機能低下などカラダにとって悪いことがたくさん起こります。
一度筋力が落ちてしまうと取り戻すのがかなり大変なため、早期に離床しカラダを動かすことが大切です。
また早期に離床することで肺炎のリスクも軽減できます。
肺炎は高齢者の死因第3位のため、とても重要になります。
早期に離床できれば、身体機能への悪い影響を防げ、早い段階で退院が可能となります。
ゴールとは
骨折のため、まずは自宅で生活できるようになることを考えます。
症例個々でゴールはで違うため、まずご自宅で生活する上で最低限の条件をご家族と相談し確認しておきます。
骨折後はだいたい身体機能が1ランク下がるとされているため、予後予測も含め行うことが大切です。
例えば、屋外T字杖歩行自立であれば、屋外T字杖歩行を軽介助〜見守りとレベルが1ランク下がります。
人工股関節全置換術(THA)とは?
続いて人工股関節全置換術(THA)についてご説明します。
適応疾患とは?
適応疾患は主に変形性股関節症です。
中には骨折でも行うケースがありますが、ほぼ変形性股関節症で行います。
そのため、置換は大腿骨頚部と大腿骨頭、それに臼蓋を置換します。
大腿骨頭置換術と大きな違いは、臼蓋を置換するかどうかです。
目的とは?
人工股関節全置換術の目的は、痛みを軽減させ生活範囲を拡大することです。
人工骨頭置換術は生活できるようになることを目指しますが、人股関節全置換術の場合、生活できることは最低目標であり、それ以上の高いレベルまで回復することを目指します。
人工骨頭置換術は大腿骨頚部骨折に対し緊急で手術を行いますが、人工股関節全置換術は予め手術の予定を立てて行うことがポイントです。
ゴールとは?
人工股関節全置換術の目的は、手術前の生活よりも活動範囲が広がり痛みが軽減することです。
そのため、人工骨頭置換術よりゴール設定レベルが高くなります。
よっぽどトラブルがない限り、この手術では屋外歩行は獲得できるようになります。
このように人工骨頭置換術と人工股関節全置換術は全く違うものであるため、注意が必要です。
さいごに
人工骨頭置換術と人工股関節全置換術は似ているようで全く違います。
各手術の適応や目的などを理解しておくことが大切です。
しっかりと手術の特性を理解し評価やアプローチを行いましょうね。