棘果長(SMD)や転子果長(TMD)の左右差や脚長差の原因を知っていますか。
今回は棘果長や転子果長の結果から、脚長差の考えられる要因や統合についてご紹介します。
棘果長や転子果長は下肢の状態を把握する上で重要な評価です。
実習中でもよく行う検査項目の一つだと思います。
みなさんは、棘果長や転子果長の結果をどのように捉えていますか。
“左右の長さが違うから脚長差がある”としか考えていませんか。
棘果長や転子果長の左右差には多くの原因が関連しており、原因をしっかりと考えることが重要です。
それでは棘果長や転子果長について詳しくご説明します。
下肢長とは?
下肢長の評価として棘果長と転子果長があります。
まずそれぞれを確認してみましょう。
棘果長(SMD)
棘果長はSMD(spinomalleolus distance)ともいわれます。
測定方法
【測定肢位】
◇背臥位
◇骨盤水平位
◇股関節屈曲伸展中間位
◇股関節内外転中間位
◇股関節内外旋中間位
【測定点】
◇上前腸骨棘から内果までの最短距離
注意点
しっかりと骨盤や股関節など中間位にします。
股関節内外転など股関節の位置によって、見かけ上の短縮や延長が生じることもあります。
転子果長(TMD)
転子果長はTMD(trochantomalleolus distance)といわれます。
【測定肢位】
◇棘果長と同じ
【測定点】
◇大転子から外果までの最短距離
注意点
膝関節屈曲や伸展位の状態、股関節変形状態によって、見かけ上の短縮や延長が生じています。
棘果長と転子果長の考え方とは
棘果長の考え方とは
棘果長は骨盤や下肢の状態の影響を受けます。
棘果長から考えられる因子はこちらです。
〜考えられ因子〜
①骨盤の傾斜
②股関節や膝関節の可動域制限
③各関節の変形 など
例えば、股関節伸展制限がある場合は膝が屈曲している分、棘果長は短くなりますよ。
また、股関節屈曲位のままでも棘果長は短くなります。
関節の変形でも棘果長は変化し、例えば変形性膝関節症で内反変形が強いケースでも棘果長が短くなります。
計測時は関節可動域制限の評価も重要になるので、しっかりと行いましょう。
転子果長の考え方とは
転子果長は棘果長の結果と統合して考えましょう。
◇左右の棘果長と転子果長が共に違う場合
この場合、脚長差の要因は骨盤や下肢のどこかにありますが、これだけでは要因を絞ることが難しいです。
◇棘果長は短く、転子果長が長い場合
この場合、ASISと内果の距離が近く、大転子と外果の距離が遠いということです。
これは変形性膝関節症の内反変形の場合に起こります。
いわゆるO脚ですね。
◇棘果長は短く、左右の転子果長が同じ場合
棘果長が違うということはASISから内果までの距離に差があるということですよね。
また転子果長が同じ場合ということは、大転子から外果まで左右差がないということです。
これはASISと大転子の間の部分に問題があることを意味しています。
要因として考えられるのは、内反股や外反股、臼蓋や大腿骨頭の変形である変形性股関節症、大腿骨頚部の短縮などが挙げられます。
統合の仕方とは?
まず棘果長や転子果長の結果から、脚長差が考えられる要因をあげます。
これに加え、関節可動域、レントゲンによる骨や関節の評価など、さまざまな理学療法評価を組み合わせ脚長差の要因をさがし、治療へつなげていきます。
まとめ
棘果長や転子果長を計測したら“なぜ脚長差が起こっているのか”そこまで考えることが大切です。
今回は下肢長からわかる問題点をいくつかご紹介しました。
下肢長からは多くの情報が得られるため、みなさんもしっかりと考えましょうね。
〜おまけ〜
脚長差の考え方に加え、大腿周径についても理解しておきましょう!
⇒必ず知っておくべき大腿周径のポイントはこちら。